平成15年設計課題

  保育所のある複合施設について 7/28(月) <<< 前のページに戻る

平成15年一級建築士試験「設計製図の試験」の課題が発表されました。
「保育所のある複合施設」が今年の課題です。過去の発表課題は「集合住宅と店舗からなる複合施設」や「緑豊かな吹抜け空間のある地域図書館」などのように用途が限定されていましたが、今年は複合施設の用途が明確でなく、様々な施設を想定した対策が必要になります。


保育所は制度上の正式名称で、一般的な施設名称として保育園が多く用いられています。児童福祉法に基く児童福祉施設のひとつとして保育所があり、厚生労働省の管轄です。文部科学省が管轄する学校教育法に基く学校である幼稚園とは違う制度です。
保育所は0才児から5才児(小学校就学の時期に達するまでの者)が対象で、乳児・ほふく室、保育室、遊戯室、医務室、調理室、事務室等を備えた施設です。この保育所のある複合施設として可能性が高いものは?と考えた場合、同じ法令に基く児童厚生施設の児童館があります。
児童福祉法における児童の定義は、
   乳児:満1才に満たない者
   幼児:満1才から小学校就学の時期に達するまでの者
   少年:小学校就学の時期から満18才に達するまでの者
とされており、「児童の健やかな育成を目的とした複合施設」と位置付けることもできます。



しかし、当サイトでは設計課題を予想することが目的ではありません。多くの課題に取り組み、様々な施設機能を理解し、どのような複合施設であっても対応できる実力を身につけることが重要だと考えます。老人福祉施設・地域福祉センター等の福祉関連施設やコミュニティ施設との複合、集合住宅やオフィスビルまで視野に入れた学習を行ってください。

平成12年に出題された「世代間の交流ができるコミュニティセンター」では、子供部門に保育所の機能である遊戯室、保育室が要求されています。既出の課題なので、同じような複合施設になるとは考え難いですが、建物全体の面積構成、所要室の要求など参考にできることも多く、概要を示しておきます。

 平成12年の課題概要 「世代間の交流ができるコミュニティセンター」
敷地 50m×65m 2750m2 北側道路(幅員15m) 東側道路(道路幅員12m)の角地
延べ面積 2200m2以上2600m2以下
屋外施設 コミュニティガーデン、遊び場(幼児・学童)、駐車場(車いす使用者用1台、サービス用4台)、自転車置場20台、ゴミ置場
所要室 交流部門 陽だまりラウンジ、情報ラウンジ、ギャラリー、多目的ホール、倉庫、喫茶室、サウナ・気泡風呂
生涯学習部門 趣味・娯楽室、パントリー、倉庫、教室(2室)
子供部門 遊戯室(2室)、図書コーナー、保育室、パントリー、保育士控室、子供用便所
その他 エントランスホール、事務室、講師控室、医務室、倉庫、便所、電気・機械室
要求図面 1階平面図兼配置図(1/200)、2階平面図(1/200)、断面図(1/200)、面積表


以下は過去に出題された課題を参考に、今年の「保育所のある複合施設」を考えてみました。

設計主旨について
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、保育所部門・管理部門・複合施設部門の適切なゾーニングと動線計画、各部門の利用時間の配慮、保育所の自然採光、周辺環境への配慮、施設の防犯、アプローチ制限などが考えられます。

<敷地及び周辺条件>
過去の出題では敷地面積2000u〜3000uの角地が多く、それぞれの道路から主アプローチ、従アプローチを考慮した計画を行うことが大切です。今年の課題でも東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。周辺条件も様々考えられますが、隣地に静寂を要する住宅や病院などがある場合には、十分な配慮が必要です。

<建築物>
ラーメン構造による鉄筋コンクリート造2〜3階建の出題に多く、地階が求められることもあります。延べ面積は複合施設の用途により異なり、2000uから5000u以上が考えられますが、平面図の作図は2〜3面だと思われます。高層の建築物が出題される場合は、基準階平面図を用い全体の構成を表現することになるでしょう。また、保育所部門の所要室として考えられる遊戯室など、大きな空間を計画するために柱を抜き、鉄骨の梁を使用することが考えられ、"一部鉄骨造としてもよい" 条件付けられることもあります。
A2の答案用紙に1/200で作図することを考えると、これ以上に大きな敷地面積や延べ面積では用紙に納まらないことも面積範囲を制限していると思われます。

<屋外施設>
保育所用、サービス用、複合施設用の駐車スペース、駐輪スペースが考えられえます。また、敷地内まとまった広さの園庭やテラスが要求されることは十分考えられます。

<所要室>
保育所の所要室は、保育室、ほふく室、乳児室、遊戯室、医務室、調理室、事務室などが想定できますが、それぞれの室機能を理解し、動線計画ができるようになることが大切です。他の所要室は複合する施設の用途により変わりますが、児童厚生施設、福祉関連施設、コミュニティ施設の機能を再確認し、集合住宅、オフィスまで広げた学習が必要だと思われます。

<要求図面>
近年の出題は、1階平面図兼配置図(1/200)、2階平面図(1/200)、各階平面図(1/200)、断面図(1/200)、面積表という構成が多いようですが、立面図が要求される場合もあり練習が必要です。







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