設計製図答案例>平成19年課題

課題 住宅地に建つ喫茶店併用住宅(木造2階建)について 2007.6.16(土)

平成19年二級建築士「設計製図の試験」の課題が発表されました。
全ブロック(全都道府県)共通の「住宅地に建つ喫茶店併用住宅(木造2階建)」です。

この設計課題から「住宅地に建つ」「喫茶店」「住宅」という3つのテーマ(キーワード)を読み取ることができます。

住宅地に建つ
住宅地には良好な住環境が求められます。平成17年に出題された「近隣の街並みに配慮した車庫付二世帯住宅」という課題名からも、試験において、美しい街並みを重視する傾向にあることがうかがえます。また、住宅地には、そこに暮らす住民相互のコミュニティも大切です。

このような住宅地に建つ喫茶店併用住宅は、景観を形成する建物として、また住民の憩いの場としての役割を担うことになります。

喫茶店
喫茶店営業は食品衛生法により、「喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲み物又は茶菓を客に飲食させる営業」とされ、飲食店営業やケーキ等の製造業とは別の業種とされますが、一般には、菓子だけでなく、サンドイッチ、スパゲティ、モーニングサービスなど軽食のメニューがある場合も多く、飲食店営業の許可をとった営業形態も視野に入れておく必要があります。メニューによって厨房面積が異なる点が大切です。

喫茶店には、マンガ喫茶、インターネットカフェなど多様な形態がありますが、住宅地に建つという課題の前文から、近隣住民の憩いの場、コミュニケーションの場として設定される可能性が高いと考えられます。また、気軽に利用できるカフェテラス等の計画が要求されることも想定できます。

喫茶と喫煙は直接的な関係はありませんが、禁煙の場所が増えてきた今日、喫煙できる場所を設けている喫茶店も多く、今年の課題においても喫煙コーナーなどの設置を考えておく必要があります。

住宅
住宅として気をつけなければならない問題として、「親子のふれあいや家族の団らんを大切にした居間、食事室、台所の計画」や「家族・友人等で楽しみながら料理・食事ができる空間の計画」「高齢者の同居」等が考えられ、これらの設計条件が要求されるかどうかによって、室の面積構成や配置にも配慮が必要になります。また、条件によっては住宅部分のプライバシーを保ちつつ、喫茶店へ行き来できるよう計画することが大切です。


設計条件の想定
<設計主旨>
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、
 ・店舗部分と住宅部分の出入口を分離する。
 ・店舗部分と住宅部分は屋内で行き来できる計画とする。
 ・喫茶店を緑地スペースに関連付ける。
 ・カフェテラスを設け屋内の客席部分と一体的に利用する。
 ・既存樹木に関連させた配置計画。
 ・喫茶店への搬入口を設ける。
 ・アプローチ指定・制限。
などが考えられます。

<敷地>
敷地は18.2m×18.2m程度が多く、10間×10間のように尺貫法モジュールの寸法で出題されることが多いようです。敷地面積としては300〜350m2程度ということになります。一面道路、二面道路(角地を含む)があり、それぞれ東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。また、敷地の一部を緑地スペースとし、建築物を制限することも考えられます。

<延べ面積>
要求される延べ面積は180m2〜220m2の出題が最も多く、近年の出題では最高250m2、最低はピアノ教室併用住宅の150m2〜190m2です。A2の答案用紙に作図するため、これ以上に大きな敷地面積や延べ面積では用紙に納まらないことも面積範囲を制限していると思われます。

<所要室>
喫茶店部分の所要室には、喫茶室、厨房、喫煙室、更衣室、従業員休憩室、客用便所などがあります。また、喫茶室内にインターネットコーナーやギャラリーなども想定できます。
住宅部分では、玄関、居間、食事室、台所、夫婦室、子供室、予備室、納戸、浴室、洗面脱衣室、洗面所、便所などがあり、特に居間、食事室、台所は1室としてもよいと条件されることも考えられます。それぞれの室機能を理解し、適切な動線計画ができるようになることが大切です。

<屋外スペース>
カフェテラスなど屋外スペースが要求されることが考えられます。

<駐車・駐輪スペース>
喫茶店用・住宅用として、それぞれ駐車スペース、駐輪スペースが要求されることが考えられます。


要求図面
平成16年以降、課題発表時に要求図面が指定されていましたが、平成19年は指定されなかったことから、本試験の問題を見るまで描く図種が分かりません。従来から木造課題で要求されている1階平面図兼配置図、2階平面図、立面図、矩計図、面積表に加え、床伏図や小屋伏図、断面図なども描く練習をしておく必要があります。

平成16年・17年には「2階床伏図兼1階小屋伏図」が要求されています。木造の軸組を表現する上で重要な図面であるため、今後も要求される可能性が高いと考えます。特に今年の課題においては、 1階店舗と2階住宅の室面積に大きな差があることが考えられ、2階床梁の構成が重要なポイントになるでしょう。


過去の類似課題
過去の出題を振り返ってみると、平成2年に出題された「飲食店(そば・うどん)併用住宅」、平成6年の「喫茶コーナーのあるケーキショップ併用住宅」が今年の課題に類似しています。過去の出題は、建物全体の面積構成、所要室の要求など参考にできることも多く、概要を示しておきます。

平成2年の課題概要 飲食店(そば・うどん)併用住宅(木造2階建)
敷地 15.47m×18.20m 281.55m2(一部を植栽スペースとして利用)
接道:南側(幅員8.0m)
延べ面積 180m2以上220m2以下
家族構成等 店主夫婦、子供2人(女子高校生、男子中学生)、通勤男子店員2人
所要室
1階
店舗:客席スペース、厨房、客用洗面所、客用便所、従業員更衣室
住宅:玄関、居間、食事室、台所、洗面所、便所
2階
住宅:夫婦室、子供室(2室)、予備室、浴室、洗面脱衣室、便所
駐車、駐輪スペース 乗用普通自動車3台

平成6年の課題概要 喫茶コーナーのあるケーキショップ併用住宅(木造2階建)
敷地 18.20m×18.20m 329.24m2(2.0×2.0の隅切り)
接道:北側(幅員10.0m歩道付) 東側(幅員6.0m)
延べ面積 180m2以上220m2以下
家族構成 夫婦(夫婦で経営)子供2人(女子高校生、男子中学生)
所要室
1階
店舗:売場(喫茶コーナー含)、ケーキ製造室、倉庫、洗面所、便所
注)店舗部分の床面積の合計は、70m2程度を目安とする。
住宅:玄関、居間、食事室、台所、予備室、洗面所、便所
2階
住宅:夫婦室、子供室(2室)、浴室、洗面脱衣室、家事室、便所、納戸
駐車、駐輪スペース 東側道路に関する部分に乗用普通自動車3台











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