市街地に建つ診療所等のある集合住宅(地下1階、地上5階建)について 7/23(日) |
|
平成18年一級建築士「設計製図の試験」設計課題が発表されました。「市街地に建つ診療所等のある集合住宅(地下1階、地上5階建)」です。
市街地型の集合住宅は、単に住居としての機能だけではなく、生活に密着した店舗や医療施設などの付加価値を持つものが多く建築されています。診療所が併設することで、入居者や地域住民の主治医としての役割を担うことができます。また、診療所等と示された「等」にも課題として重要な要素が含まれていると考えられます。「等」には薬局、コンビニ、飲食店、美容院など多種多様な施設が考えられ、それぞれの用途・機能を理解し、動線を考慮した計画ができるようになることが大切です。
もう一つの大きな特徴は、地下1階が課題発表時に示された点です。過去の課題においても地階の要求はよくありましたが、電気・機械室を設けることが多く、地階平面図が要求図書として求められることは殆どありませんでした。しかし、今年の課題では、地下1階と明確に示されたことから、主要な用途の一部が地階に要求され、地下1階平面図を描くことも考えられます。
|
|
過去に出題された課題の傾向を参考に、今年の課題を考察してみました。
●設計主旨について
課題の最初に記載される最も重要な設計条件として、住戸部門・診療所部門・その他部門等の適切なゾーニングと動線計画、オープンスペースの計画、施設の自然採光、周辺環境への配慮、緑化、アプローチ制限などが考えられます。
<敷地及び周辺条件>
過去の出題では敷地面積2000u〜3000uの角地が多く、それぞれの道路から主アプローチ、従アプローチを考慮した計画を行うことが大切です。今年の課題でも東西南北の接道が想定でき、多様なパターンが考えられます。周辺条件も様々考えられますが、隣地に建つ施設によっては、プライバシー、騒音問題など十分な配慮が必要です。
<建築物>
ラーメン構造による鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の指定が考えられます。今年の課題は地下1階、地上5階建と示されていますので、地階を含めた延べ面積3000uから5000u程度が予想されます。A2の答案用紙に1/200で作図することを考えると、これ以上に大きな敷地面積や延べ面積では用紙に納まらないことも面積範囲を制限すると思われます。
<屋外施設>
居住者用、診療所用の駐車スペース、駐輪スペースが考えられえます。また、敷地内にまとまった広さのオープンスペースやコミュニティ広場、平成13年に出題されたようなプラザやモールが要求されることも十分考えられます。
<所要室>
集合住宅については、ワンルームから4LDKまで、多様なタイプが考えられます。住棟形式についてはフラットだけではなくメゾネットについても考慮しておく必要があります。
診療所等については、待合室、診察室、手術室、レントゲン室、病室(19床以下)の主要な室が想定でき、さらに診療所「等」という点から、薬局、コンビニ、飲食店、美容院など多種多様な施設の複合が考えられます。それぞれの用途、機能を理解し、動線を考慮した計画ができるようになることが大切です。
<要求図面>
近年の出題は、1階平面図兼配置図(1/200)、2階平面図(1/200)、各階(基準階)平面図(1/200)、断面図(1/200)、面積表という構成が多いのですが、今年は地下1階、地上5階建と明確に示されていますので、地下1階平面図も練習しておく必要があります。
|
|
●類似課題
平成11年「高齢者施設を併設した集合住宅」
平成13年「集合住宅と店舗からなる複合施設(3階建)」
建物全体の面積構成や所要室の要求など、参考にできることも多いため類似課題の概要を示しておきます。
平成11年の課題概要 「高齢者施設を併設した集合住宅」 |
敷地 |
50m×38m 1900m2 北側道路(幅員18m) 西側道路(幅員8m) |
構造 |
鉄骨鉄筋コンクリート造、地下1階、地上7階建 |
延べ面積 |
3700m2以上4200m2以下 |
屋外施設 |
高齢者施設用駐車場(マイクロバス2台、サービス用1台)、車寄せ、集合住宅用自転車置場30台、ごみ置場 |
所要室 |
高齢者施設 |
デイサービス部門-事務室、機能訓練室、食堂、休養室、相談室、介護者教室、厨房、浴室(男女兼用)、倉庫、便所、エントランスホール |
ショートステイ部門-宿泊室、機能訓練室、食堂、パントリー、医務室、サービスステーション、洗濯室、汚物処理室、倉庫、便所、エレベーターホール |
住宅部門 |
住戸30戸(1戸当たりの専用面積70m2)、エントランスホール、管理事務室 |
その他 |
喫茶室 |
要求図面 |
1階平面図兼配置図(1/200)、2階平面図(1/200)、基準階平面図(1/200)、断面図(1/200)、面積表 |
平成13年の課題概要 「集合住宅と店舗からなる複合施設(3階建)」 |
敷地 |
52m×36m 1872m2 北側道路(幅員15m) 南側道路(幅員8m) |
構造 |
鉄筋コンクリート造、地上3階建 |
延べ面積 |
1700m2以上2100m2以下 |
屋外施設 |
プラザ、モール、駐車場(車いす用1台、サービス用2台、居住者用6台)、自転車10台分、ごみ置場 |
所要室 |
店舗部門 |
レストラン、コーヒーショップ、ブティック、ガーデニングショップ、ギャラリー、書店、便所 |
住居部門 |
フラット住戸(計6戸)、メゾネット住戸(計4戸)、エントランスホール、管理事務室 |
要求図面 |
1階平面図兼配置図(1/200)、2階平面図(1/200)、3階平面図(1/200)、断面図(1/200)、面積表 |
|